江部賢一ファンクラブ(私設)

ギターの名編曲者、江部賢一さんの仕事を、記録します。

武満徹 不良少年③(浜坂福夫)

番外編で武満徹を取り上げています。「不良少年」について。

 

『現代ギター』誌の関連記事としては、1999年4月号「濱田滋郎対談 浜坂福夫」があります。

 

映画に使われた録音(三重奏版)の演奏者は、浜坂福夫、秋山実、舟山幸一の三名。

浜坂福夫さんは、2004年7月に80歳で亡くなりました。貴重な証言です。

(抜粋を引用) 

濱田 映画の仕事も いろいろなさったんですね。

浜坂 

そうそう、武満徹さんともやりました。『不良少年』という映画の音楽を。このときは、武満さんが真夜中の12時頃に電話をかけてきたんです。ぼくはその頃、六本木に住んでいましてね。電話口に出ると「浜ちゃん、ぼく今、草月会館で映画の音楽録(と)ってるんだけど、ギターがどうもうまくいかなくてね、今までかかって1本も録れないんだよ。ギタリストをあと2人連れて3人で一緒に来てくれる?」と、武満さんが言うんですね。そこで、浜坂教室のギタリストを連れて行きました。

スタジオに入ってらしたのは クラシックの世界で高名な3人の方たちだったんですが、うまく弾けなかったらしい。

 

濱田 クラシックギタリストはどうしても ふだん個人作業に慣れてますから、合わせることには弱い面があるんでしょうね。以前は特にそれが強かった⋯⋯。

浜坂

そう、ギターの1台が3連音だったり、リズムがほかと違うと、もうダメなんですね。しかも武満さんのは、3つのギターがそれぞれ別なリズムを弾く、とても精密なものでしたからね。あとでそれをデュオの楽譜に直したものも出ましたが。

 

濱田 そう、近頃よくデュオで弾かれますね。

  

ポップスの現場で長く活躍されていたため、ライヴ演奏に、特に思い入れがあったようです。

 

(ポピュラー曲をプログラムにまぜて弾くクラシックギター演奏家もいるが)

浜坂

たとえば、ある曲を3コーラス弾くとして、それが全部同じアレンジを、ただ譜面どおりに繰り返して終わり。悲しいんですよね。もっといろんなことを勉強してほしいです。

濱田 たしかに、クラシック・ギタリストの大部分はインプロヴィゼーション(即興)も苦手ですしね。

浜坂

(中略)(ポピュラー曲を弾くなら)楽譜どおりの繰り返しではなく、聴いている者を楽しませる演奏をしてくれなくっちゃ。

(中略)

浜坂

楽譜どおりにしか弾けないのであれば、武満さんのビートルズみたいな、良いアレンジをせめて使っていただきたい。ギターの味わいを生かした、たとえば新しいコードワークを取り入れたり、そうした工夫もしないで、どうしてコンサートで人に聴かせられるんでしょう。(中略)ぼくはギターが大好きですから言うんです。

 

 

記事の中で、「湯の町エレジー」や「悲しい酒」 の演奏をしたという話がありました。

森繫久彌さんの専属ギタリストも、されていたようです。

ポップスを編曲した曲集も、何冊か確認できました。

 

『アルメイダのロマンチックギター』(全音 1967年) の解説も書かれています(2021/6/12追記)

 

浜坂 福夫(ハマサカ フクオ)


職業 ギタリスト、音楽プロデューサー

専門 バンジョー、作曲、編曲

肩書 ハマ・プロモーション代表、日本音楽家ユニオン初代代表

生年月日 1924年大正13年)5月2日

出生地 岩手県久慈市

経歴 独学でギターやバンジョーの演奏、作・編曲を習得し、ギタリストとなる。

NHK交響楽団との共演、二葉あき子、淡谷のり子などと舞台や放送、レコーディングで共演。また映画「ねむの木の詩」、「SL100年の歴史」「わんぱく漂流記」などドキュメントやドラマの作曲も手がけた。

演奏家協会、芸団協など業界組織のリーダー役を長年務め、昭和59年には日本音楽家ユニオンの初代代表に就任、演奏家の生活と権利を守るために尽力。日本演奏家協会委員長も務めた。著書に「はじめて弾くギター」ほか。

所属団体 日本音楽家ユニオン日本芸能実演家団体協議会

受賞 芸能功労者表彰(第27回)[平成14年]

没年月日 2004年(平成16年)7月31日

伝記 『したたかな調べ』浜坂福夫 著(発行元 東京新聞出版局 1988年発行)

出典 日外アソシエーツ『新撰 芸能人物事典 明治~平成』(2010年刊)

 

元の記事で、聴き手をされていた濱田滋郎さんは、今年の3月に亡くなりました。

コンサートも録音も、膨大な量を聴かれていたようです。『現代ギター』を読む度に、濱田さんの博聞強記に感心させられました。ご冥福をお祈りします。

 

濱田 滋郎(はまだ じろう、1935年 - 2021年3月21日)は、日本の音楽評論家、スペイン文化研究家。日本フラメンコ協会会長、スペイン音楽こだまの会主宰。父親は童話作家の濱田広介である。東京都出身。

ウィキペディアより引用)

 

 

 浜坂さんと舟山幸一さんは、二重奏をしている録音があるようです(『殺し屋のテーマ』日本エンゼルレコード)。

舟山さんの編曲は、『現代ギター』に掲載されたことがあります。「ロス・インディオス・タバハラス」の曲集も編集しています。

秋山実さんは、ヴィンセント・ロドリゲス、アンリ・ラモーの別名で、ギターのレコードを出しています。

舟山さんと秋山さんは「ビート・フィーチャーズ」というグループを組んでいたようです。

舟山幸一とビート・フィーチャーズ 」

 

リーダーの舟山幸一は、浜坂福夫と伊藤翁介の両氏に師事してギター奏法と音楽理論を学びました。小山四雄マンドリン・オーケストラでは第一奏者として活躍し、各レコード会社からはギター独奏のレコードも発売しました。

その後はフリーになり、1959年にはハイドン音楽祭参加、1960年には現代音楽祭で前衛音楽の大御所、ジョン・ケージと共演して注目されました。正確でバランスのとれたテクニックの持ち主で、澄んだ冷たさをたたえた音色には知的精彩があります。

秋山実、加藤稔、北村澄など、いずれもギター界の著名な指導者に師事したベテランです。もともとクラシック畑の出身なのでテクニックも安定しており、ポピュラー、サーフィン音楽などパンチのきいた音楽では本領を発揮します。

 

ベンチャーズエスケープ」(1966)のカバー

カエル純(@kaerujun)/2018年01月30日 - Twilog

 

youtu.be

 

『エレキヒット ステレオベスト18』(ソノシート)にもプロフィールが出ています。

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