「CD」(2020/12/14記事)で取り上げましたが、実物を確認したので改めて記事にします。
『Segundo/セグンド』井上仁一郎 (T-TOC RECORDS XQDN-1069)
(2015年9月2日 発売)
えべけんさんの関わった曲は1曲です。
「アランフェス協奏曲より」(江部賢一・井上仁一郎 共編)
収録曲
Ⅰ. デチーソ Ⅱ. アンダンテ Ⅲ. アレグロ
2. アトム・ハーツ・クラブ・デュオ(吉松 隆)[共演/山﨑拓郎]
Ⅰ. アレグロ Ⅱ. アンダンテ Ⅲ. スケルツォ Ⅳ. フィナーレ
3. チキ・チキ(S. チョルバ)井上仁一郎・編[橋爪晋平]
4. アランフェス(J. ロドリーゴ)江部賢一&井上仁一郎・編[共演/鈴木大介]
5. 地中海の舞踏(パコ・デ・ルシア&アル・ディ・メオラ)井上仁一郎・編
[共演/山﨑拓郎]
6. 風景画(井上仁一郎)[共演/山﨑拓郎]
7. 禁じられた遊び(A. ルビーラ)井上仁一郎・編[共演/橋爪晋平]
8. アルハンブラ宮殿の想い出(F. タレガ)J. サグレラス・編[共演/原善伸]
ライナーノートに、えべけんさんの書いた紹介文がありました。引用します。
2009年に井上仁一郎を含む5人のギタリストでスペインで演奏旅行を行なったが、その時に人気だったのがアランフェス協奏曲をリアレンジしたポップス風の「アランフェス 2009」だった。その後井上氏の希望により3重奏にアレンジしたが、彼はそれらを基にアドリブパートなども含む新しいかっこいい「アランフェス 2012」を作り上げた。
曲は原曲に沿ったアダージョ部分から始まる。メインテーマの後、リズムはスペイン風の早い6/8拍子に突入する。ここでもメインのテーマが乗ってくる。テーマがひと通り終わるといきなり激しいロック調のブリッジが現れる。ここでは16ビート基調にしたリズムでアドリブ風のメロディが演奏される。そしてエンディングに向けて2/4拍子のサンバのリズムに突入する。この間効果的なアドリブが繰り広げられ、エンディングに雪崩れ込む。
という原曲とはとても似つかない構成になっているのだがリズムの変化、アドリブなどを楽しんでもらえれば幸いである。
(江部賢一)
鈴木大介さんのブログ(2015年12月26日)で、追悼文とともに、この録音について書かれています。ぜひ原文を読んで下さい。
「アランフェス」(2022/8/29追記)
「アランフェス 2012」
「アランフェス 2009」(五重奏) 「2012」の元になったもの。
『Segundo/セグンド』のライナーノートは、濱田滋郎さんによるものです。
抜粋を引用します。
ギター・デュオの豊かな世界
ここで、ぜひ改めて考えてみたいのが、「ギター・デュオ」という演奏形態が持つ意味合いの深さである。
ギターは、「それ自体、単独で自立できる楽器」であるという、立派な特質を持っている。メロディーおよび適宜なハーモニー、そしてリズム――音楽の3要素のすべてを、ギターは十全に(ほぼ十全に)表現できる。そのために却[かえ]って、奏者は従来「独りの世界」にこもりがちで、他者との合奏を好まなかったのだ、と言える。
が、いったん「ギター二重奏」という世界を知ってみれば、それがいかに豊かな広がりを持つものであるかに気づかされよう。1挺だけのギターには、やはり音楽表現上の制限がつきまとう。旋律と和声、あるいは旋律同士の組合せに、機能上、どうしても不可能なものが多いのだ。
2つのギターは、そうした宿命的な不可能を難なく取り除くことができる。並行して同時に流れる2つの旋律を1人の奏者が独奏する場合と、2人の奏者が別々のギターで弾き分ける場合――どちらが生き生きと、真に音楽的に聴こえるは言うまでもあるまい。和音やリズムに関することもひっくるめて、2つのギターは可能性を大きく広げる。
腕の立つギタリストたちが数を増してきたこんにち、「ギター・デュオ」の世界には、充実した展開の可能性が豊かに望まれる。井上仁一郎が名手たちを相手取って作り上げたこのCDには、魅力的な世界への示唆が一杯に詰まっている。
(濱田滋郎)