「ブラジリアン・ギター・コンサート」(1986年10月26日)の記録がありました。
『現代ギター』(1987年2月号)「初級レッスン室」編集部による記事
現在江部先生は、自宅でギターのレッスン、ヤマハの目黒音楽センターではコンピューター・システムによるシンセサイザー教室と、2つの指導活動を行っている。
[中略]
ヤマハの目黒音楽センターは、ヤマハ音楽振興会の建物の中にある。教室に入ると、ミュージック・コンピューター、ヤマハCX-5がずらりと並んでいる。
[中略]
「今、ニャタリとかのブラジルものに凝っててね。これがなかなかシンセに合うんだよ。」
その成果は10月26日、川崎のスタジオ・サンメディアで行われた「ブラジリアン・ギター・コンサート」で発揮されている。
『現代ギター』(1987年1月号)「コンサートひろいあるき」
ブラジリアン・ギター・コンサート
[川崎の]スタジオで、ポピュラー・レパートリー編曲でお馴染みの江部賢一がミニ・コンサートを開いた。
プログラムは下記のように、すべてブラジル音楽で、このあたりが彼のもっとも得意とするレパートリーなのだろう。
前半は江部のギター・ソロを中心にギター・デュオを加えたもので、ギターはエレアコ・タイプのものが、全体にコーラス効果をかけながら使用された。
江部の特徴は左手の和音の押さえと、その動きに優れているところで、複雑なコード進行など、クラシックのギタリストが演奏すると鋭くなりがちな部分も、彼が弾くと無理なく優しい感じで連なってくれる。
半面、メロディー・ラインがやや犠牲になる嫌いがあるが、これは江部のせいというよりも、ギター自体の持つ宿命かも知れない。
後半はギターにフルート、それにコンピューター制御によるシンセサイザーの三つ巴で、内容も、広く一般に楽しめるものだった。
ただ、当日のような狭い会場で聞かされる電気的なPA[音響機器]音というのは、レコードの再生音を聞いているような感じで、レコードを聞けば済むような気持ちになってしまう。それゆえか、フルートとギターのみで、アコースティック感覚豊かに演奏された「オルハ・マリア」は逆に出色の印象を残した。
ただ誤解のないように言い添えれば、残りのトリオ(?)の曲目に関しても、極めて練り上げられた好演で、演奏内容に物言いを付けている訳ではない。
シンセサイザー音とアコースティック音のブレンドは難しく[そのため、生の音を素材とするサンプリング・シンセが多用されるが]だからこそ、今回のようなコンパクトなシンセに頑張ってもらいたい気もする。
なにはともあれ、このような面白い試みには、皆が聞きに行けるよう、少し余分に宣伝(かつ広い会場に)していたら、などと帰りの道すがら考えた。
[演奏者]
江部賢一(G)、岩本俊一(G)、野田純(Fl)、浜田謙(Mixer)
[プログラム]
前半/ソロ・デュオ
トリステ、ウェイブ、デサフィナード(ジョビン)
ショーロ・トリステ、グラシオーソ、ノッソ・ショーロ(ガロート)
ショティッシュ・ショーロ(ヴィラ=ロボス)[以上、江部ソロ]
ブラジル風舞曲(ニャタリ)[岩本ソロ]
ブラジリアン・ソウル(ニャタリ)[二重奏]
ラメント(ピシンギーニャ)[二重奏]
後半/G、Fl、Synth
ストーン・フラワー(ジョビン)
オルハ・マリア(ジョビン)[G、Flのみ]
ブラジル・ポピュラー組曲より5曲(ニャタリ) [この組曲は6曲で構成]
サマンバイア(マリアーノ)
[(1986年)10月26日/川崎:スタジオ・サンメディア]
T.N.[署名]
PAは「Public Address」の略で、「大衆伝達」を意味します。
その役割は、①音声や音楽を、②音質および音量を調整し、③スピーカーから聴衆に向けて伝達することです。
野田純さん(フルート)の演奏は、『大人のギター ギター倶楽部』第5号(2003年)・第6号(2004年)のCDに収録されています。
この時の演奏曲目に近い音源をまとめました。
前半/ソロ
トリステ えべけんさんの編曲ではありません。
ウェイブ
デサフィナード(ジョビン)
ショーロ・トリステ No.1とNo.2
グラシオーソ
ノッソ・ショーロ(ガロート)
ショティッシュ・ショーロ(ヴィラ=ロボス)
ブラジル風舞曲(ニャタリ)
ブラジリアン・ソウル(ニャタリ)[二重奏]
ラメント(ピシンギーニャ)[二重奏]
後半/G、Fl、Synth
ストーン・フラワー(ジョビン)
オルハ・マリア(ジョビン)G、FlのみOlha Maria/Amparo
ブラジル・ポピュラー組曲より5曲(ニャタリ)
Suite Popular Brasileira - R. Gnattali
1. Invocacão a Xango
2. Toada
3. Chôro
4. Samba-Cancão
5. Baião
6. Marcha
サマンバイア(マリアーノ)
「グラシオーソ」「ショーロ・トリステ」は、えべけんさんの『現代ギター』誌の連載で、譜面が掲載されました。
『現代ギター』誌の記事・連載⑥ 90年代 クロスオーバー・ギター研究
(2020/6/21記事)
⑪ グラシオーソ(ガロート)[D-G-D]
⑫ ショーロ・トリステ(ガロート)[Am]No.1
「ストーン・フラワー」「アンパロ」は、えべけんさんの『現代ギター』誌の連載で、ギター二重奏の譜面が掲載されました。
『現代ギター』誌の記事・連載④ ザ・ポップス道場 PART4(2020/6/3記事)
② ストーン・フラワー(二重奏)(ジョビン)
『現代ギター』誌の記事・連載⑧ クロスオーバー・ギター研究(2020/7/14記事)
㉖ マリアへ愛の歌を[アンパロ](ジョビン)(二重奏)[D]
「ストーン・フラワー(二重奏)」
「マリアへ愛の歌を」[アンパロ](ジョビン)(二重奏)
「ブラジル・ポピュラー組曲」(ニャタリ)全6曲の参考音源
Suite Popular Brasileira - R. Gnattali
1. Invocacão a Xango
2. Toada
3. Chôro
4. Samba-Cancão
5. Baião
6. Marcha
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