番外編として、様々なビートルズ編曲を取り上げました(3/4~3/12)。
同じ題材で比較してみれば、えべけんさんの編曲の特徴が分かるのではないか、という意図でした。
しかし筆者は、編曲を音楽的に分析することができません。
そこで、えべけんさんの、編曲についての記事を、抜粋して引用します。
「コンポーザー入モン(11)」から、「アレンジについて」です。
『現代ギター』1989年2月号。「80年代の記事・連載 」(5/6)で概要を紹介。
「アレンジについて」 江部流アレンジ 3つの要素(調・リズム・装飾)
調(Key)の設定(メロディーの音域)
(これは)ベース音が、まんべんなく使える調という風に考えられます。
ギターという楽器は、単旋律楽器として考えると大変広い音域をもっています。が、メロディーも伴奏も同時にやってしまう独奏用とかんがえると、かなり限られた音域しか与えることができません。
しかも無理なくメロディーが弾けて、和声的にも満足させられるという条件付きですから、これはもう試行錯誤、パズルの世界です。
調を決定する際のチェックポイントとしては
①開放弦がたくさん使えるかどうか(メロディー、ベースとも)
②ベースの動きがスムーズかどうか
③和声的に充分満足させられるかどうか(特にコードの第3音を入れられるか)
④無理な指づかいにならないかどうか
などが考えられます。が、とにかく、あまり固定した調にとらわれず、いろんな調に移調して試してみることが大切です。何しろパズルのようなものですから、意外な調を発見できることもあります。
リズムの決定(拍子も含む)
(これは)アレンジの中でも、最も面白い部分です。「禁じられた遊び」をサンバにしたり、スウィングにしたり、好き勝手なことが考えられるわけですから、こんなに楽しいことはありません。しかし、まかり間違うと下品になってしまうという側面も。特に色もののリズム(サンバ・ボサノバ・タンゴなどのラテン系のもの)を使う場合は要注意です。
(拍子を変えることで)新たな展開が生まれてくることもあります。これは既成曲をアレンジするときの発想の転換に役立ちます。ただし、変化させることで新しい価値を創造するのだという、しっかりした意識を持って。
イントロ・エンディング・間奏・その他 オカズ(装飾)の創作
(これは)曲をまとめたり装飾したりするのに必要な要素です。
イントロは、(必要ない場合もありますが)主に曲中のフレーズ(サビの一節)などが使われたりします。
エンディングは、かなり重要です。イントロを考える前に、時間をかけて充分練り上げてください。大切なことは、終止としての性格を、はっきり持たせること。同時に、新鮮な創意工夫が大きなポイントになります(イントロも同じ)。
個人的な感想ですが、えべけんさんの編曲は、よく練られたものだと感じます。
和音の響きが良く、メロディーもベースも良く鳴り、無理なく演奏できるものです(簡単ではないのですが)。
えべけんさんの編曲は、試行錯誤の結果として生まれたものだったのでしょう。
「ミッシェル」竹内永和
「ミッシェル」武満徹
「ミッシェル」江部賢一
「イエスタデイ」江部賢一
「フール・オン・ザ・ヒル」セルシェル
「フール・オン・ザ・ヒル」江部賢一