よく演奏されるものは、武満徹さんの編曲です。『12の歌』からの4曲です。
『12の歌・地球は歌っている』(武満徹 編曲)は、1977年に全音楽譜出版社から出版されました。1曲ずつピースになっていました。表紙デザインは和田誠によるもの。
箱入りの12冊セットもあったようです。
https://twitter.com/ssss_clav/status/1313316936013418497
現在は、日本ショット社から、1冊になったものが出ています。
(ショット版には、付いていません。)
編曲ノオト
ギターは、音色変化に富んだ美しい楽器です。
「小さなオーケストラ」とさえ言われるほどですが、機能の点でかなり不自由な面をもっています。しかし、そのために反ってこの楽器は作曲者(あるいは編曲者)に、特殊な愛着と好奇心を喚ぶのでしょう。
私はギターと言う楽器が好きです。そして、自身のよろこびのためにこの「12の歌」を編曲したのですが、だがそればかりではなかった。率直に言って、私は、現在のギター音楽のレパートリーの狭さに疑問を感じもし、また不満があります。クラシック・ギター(特に日本で)の世界が、「今日」との触れあいを失った閉ざされた状況にあるのは、限られたレパートリーを洗練された技巧で上手に演奏するだけの趣味に陥ったからだろうと思います。
音楽は個人の好みや趣味から、また慰めから出発するものでしょう。でも、その地点に停まるものであれば、音楽はけっして生きたものとはなりえません。
私は大それた野心を抱いてこの編曲を試みたわけではありませんが、ギタリストたちの固定した風景に、もうひとつの窓から別の風景を開きたいと考えたのです。
「12の歌」は、それぞれに高度な演奏技巧を必要としますが、それはまず なによりも柔軟な精神へのエチュードなのです。
ロンドンデリーの歌(アイルランド民謡)⑥D
オーバー・ザ・レインボー(アーレン)
早春賦(中田章)
失われた恋(コスマ)
星の世界(コンバース)⑤G、⑥D
シークレット・ラヴ(フェイン)
ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア(レノン&マッカートニー)⑤G、⑥D
ミッシェル(レノン&マッカートニー)
ヘイ・ジュード(レノン&マッカートニー)⑤G、⑥D
イエスタディ(レノン&マッカートニー)
インターナショナル(ドジェイテール)
藤井眞吾さんが、ブログで4回に亘り、武満徹について書かれています。
武満徹の場合の「手」-3 | 藤井眞吾:Shingo’s Diary (shingofujii.com)
荘村清志さんインタビュー(武満徹とのエピソード)公益財団法人 文教アカデミー
スペシャルインタビュー 荘村清志×武満 徹 - ホールの催し物 (b-academy.jp)
10月18日 武満徹へのオマージュ プログラムについて(8月24日版): ギタリスト 鈴木大介のブログ (webry.info)
全曲を収録したCDとしては、福田進一さん、鈴木大介さん、村治佳織さん、田部井辰雄さんのもの等があります。荘村清志さんのレコード(1977)もあったようです。
荘村さんのレコードを紹介しているブログがありました。(3/27追記)
荘村清志による武満徹の「ギターのための12の歌」の中古レコードを入手しました:焦燥する中年男の日常:SSブログ (ss-blog.jp)
大萩康司さんのCDもあります(『想いの届く日』)。(3/16追記)
『12の歌』に続くものとして、「ラスト・ワルツ」があります。
『現代ギター』2017年3月号に、鈴木一郎さんによる、誕生の経緯の記事があります。1996年7月号にも出ていたかも知れません。
ある時、パリへ立ち寄られた武満さんとシャンゼリゼのピアノ・バー "ASCOTT"で朝の4時までお酒を飲んだことがありました。
「このカルバードスおいしいネ...ところで君に1曲何かプレゼントしようと思うが、何か希望はある?」とおっしゃったので、 「この店の閉店のテーマ曲は《ラストワルツ》なんですヨ、聴こえるでしょう...あの曲をギターで弾きたいナ」 「それじゃ明日、いえ今日の朝の11時にホテルへ取りに来なさい。書いておくから...。
武満さんはホテルへ帰られ、この《ラスト・ワルツ》を 編曲されました。フロントに預けられた楽譜を手にしたのは約束通り朝の11時でした。
『現代ギター』2017年3月号
鈴木大介さん編曲の「三月のうた」は、『現代ギター』2004年3月号に掲載されました。
武満徹『SONGS』から「三月のうた」
「三月のうた」(谷川俊太郎/作詞)
わたしは花を捨てて行くものみな芽吹く三月に
私は道を捨てて行く
子等のかけだす三月に
わたしは愛だけを抱いて行くよろこびとおそれとおまえ
おまえの笑う三月に
武満徹の『12の歌』は、改めて記事にしました。(2021/4/5記事)