『現代ギター』誌で「江部賢一のザ・ ポップス道場 PART2」が1年間連載されました(1995年4月号~1996年3月号)。
前年度に続く連載です。PART2のタイトルは「アコースティック・ギタリスト研究」です。
さて今回から、ちょっと趣向を変えて、ジャズ・ポピュラー系のギタリストを取り上げ、その奏法や音楽へのアプローチの仕方を研究していきたいと思う。
PART2の特徴は、採譜を元にしていることです。
楽譜を見ると、多くは「adapted」となっています。元の演奏を採譜し、改作・修正して整えているということでしょうか。
自分のアレンジと分けているのは、他のアレンジャーやギタリストに対する、敬意の表れなのかも知れません。
各回の文章は、ギタリストの紹介だけでなく、演奏解説・おすすめの音源まであり、ギター愛を感じさせるものでした。
① ティー・フォー・トゥー 前半(アルメイダ)[E]95.4「二人でお茶を」
② ティー・フォー・トゥー 後半(アルメイダ)[E]95.5
③ いそしぎ(アール・クルー)[G]95.6
④ コルコヴァード(チャーリー・バード)[C]95.7 コルコバード
⑤ デイシャ/離別(バーデン・パウエル)[Am]95.8
⑥ 黒いオルフェ/カーニバルの朝(ジェフ・リンスキー)[Em]95.9
⑦ ストリングスの休日(ガロート)[A-C]95.10
⑧ ザ・クロウ(チェット・アトキンス)[A]95.11
⑨ サラのサンバ(ラウリンド・アルメイダ)[Dm]95.12
⑩ 黒いオルフェ/カーニバルの朝(ホセ・フェリシアーノ)[Em]96.1
⑫ ボンファに捧ぐ(ジョアン・ジルベルト)[F]96.3
( )内は、元になった演奏のギタリスト
初回は、ラウリンド[ローリンド]・アルメイダ。
ラウリンド・アルメイダはガットギターでクラシック畑とジャズ畑のどちらでも歴史的に重要な仕事をした人だ。
本人がブラジル人ということもあって、隠れたブラジルのギター曲をアメリカに紹介するなど、アルメイダの楽譜やレコードは、ブラジル音楽の宝庫だった。
アルメイダの真骨頂は、ソロ・ギターのアレンジにあるといっていいだろう。考え抜かれたリハモナイズと、意表を突いたきらめくようなパッセージ。何よりも、ギターの機能を知り尽くした職人のワザ、とも言える美しく響くコード・サウンド。どの曲をとっても、アレンジのお手本と言える素晴らしいものだ。(第1回より)
連載中にアルメイダが亡くなり(1995年7月26日、77歳)、第9回にも追悼で取り上げられました。
アルメイダが逝ってしまった。もうかなり高齢だったので、その日が近いことは分かっていたが、いざそうなってみるとやはり大切なものをなくしたような気がする。
アルメイダの活躍はクラシック畑とジャズ畑の両方の分野にまたがり、とても一人の人間の仕事とは思えないほどの、精力的な演奏・アレンジ・作曲を行ってきた。セゴビアの仕事量もすごいと思うが、それに匹敵するか、あるいは上回っているのではないか。
セゴビアはクラシックの王道を歩んだが、アルメイダはあくまでもソフト路線。好きだなあ、そういうところが。合掌。(第9回より)
「黒いオルフェ」は、違うギタリストが、同じキーでアレンジしているため、違いを楽しむことができます。
この連載は、1995年3月まで続きます。そこから選ばれた曲が『ポピュラー・コレクション』(ソロのためのvol.1・vol.2 、デュオのためのvol.1・vol.2)になります。
原曲を集めてみました。
通好みの、採譜の難しそうな曲が揃っています。
「ティー・フォー・トゥー」(二人でお茶を)ラウリンド・アルメイダ
「いそしぎ」アール・クルー
「コルコヴァ―ド」チャーリー・バード
「デイシャ/離別」バーデン・パウエル
「黒いオルフェ/カーニバルの朝」ジェフ・リンスキー
「ストリングスの休日」ガロート
「ザ・クロウ」は、2:43~5:05 頃です。
「サラのサンバ」ラウリンド・アルメイダ
「黒いオルフェ/カーニバルの朝」ホセ・フェリシアーノ
「ボンファに捧ぐ」
「ボサノヴァ・ギターの練習曲として長く残る名曲ではないかと思う。」(第12回より)