1980年代の『現代ギター』誌の連載について、詳しく見てみます。
概要は以前、書きました(4/17記事)。
1984年5月号 「11弦ギター讃歌」
「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」(11弦用)[G]の楽譜あり
1984年7月号 「ギターライフのポイント」
プロフィールあり
1984年9月号 「アンサンブル アレンジ法」
1987年2月号~8月号 「初級レッスン室」
1988年4月号~1989年3月号 「コンポーザー入モン」
「アンサンブル アレンジ法」
1984年9月号 5ページ。トランスクリプション(原曲をギター用に直す)について。「ブランデンブルグ協奏曲」を例に、手順を説明しています。楽譜は完全なものではありません。
アレンジの手順は、①選曲(理由)、②キー(調)の決定~音域の確認、③移調パートの振り分け・調整、としています。
「Keyの決定は最も大切な要素だ。これでアレンジの大スジが決まってしまうからだ。全体の雰囲気、明るさ暗さ、弾きやすい弾きにくいなど、アレンジの成否がかかっている。くれぐれも慎重に考えなければいけない。」
「初級レッスン室」
1987年2月号は編集部による予告。3~8月号で「リズムの話」が6回にわたり書かれました。ページ数は少なく、見開き2ページでした。
第1回 ジャストビートのすすめ、ビートカウント、足を使ったカウント
第2回 リズムの名前、バーデンパウエルのカッティング
第3回 リズム細分化トレーニング
第4回 ウラ拍強化トレーニング
第5回 フェイクについて、「16ビートのブーレ」の楽譜あり
第6回 フェイクのつづき、ジャズ様式的リズム練習法
見出しのとおり、ポピュラー音楽のリズムに関する講座でした。
各回に譜例はありましたが、1曲として出ているものは「16ビートのブーレ」だけでした(記事の中ではタイトルなし)。デイブ・グルーシンのアレンジが元になっているとのこと。
初回に、えべけんさんの言葉が紹介されています。
「体でビートを感じられるようになれば、ビートをバックに自在に遊べるようになるのです。メトロノームに頼るのではなく、自分がメトロノームになり、自分からビートを出さなくてはいけない。」
「一流と呼ばれている人の演奏にはビートがあります。リズムを感じさせてくれます。」
「コンポーザー入モン」
1988年4月号~1989年3月号。各回2ページ(第2回は2ページ半)。
「クラシックの和声法や対位法はひとまず置いといて、ジャズ・ポピュラーからのアプローチで、気軽に楽しみながら作曲をしてみたくなるようなコーナーにしていきたい。」
課題と添削で、読者とやりとりのある講座でした。
コード進行にメロディを乗せる方法、その逆、コードパターンの知識など。
第11回では、「江部流アレンジ3つの要素」を、①調(Key)の設定(メロディーの音域)、②リズムの決定(拍子も含む)、③イントロ・エンディング・間奏その他オカズの創作、としています。
①については、「いろんな調に移調して試してみることが大切」とのこと。
第12回では、ギター譜の書き方について述べています。「見やすく、必要な声部がひと目で分かるような書き方が望ましい」としています。
えべけんさんの楽譜は、見やすくて美しいと思っていましたが、意識して作られていたのでした。いずれの記事も、えべけんさんの編曲の秘訣をうかがわせるものでした。
記事の抜粋を引用します。(2021/4/29追記)
「コンポーザー入モン(12)」 (1989年3月号)
古くて新しい問題、今なお世界的に確立されていない、ギター譜の書き方について述べてみましょう。
ギター譜とは
普通の音符で書かれた楽譜の中で、ソロギターの楽譜ほど複雑なものは、ありません。何しろメロディー・和音・対旋律・ベースなどの全ての要素が、1段の五線にギュッと詰め込まれていて、さらに指番号・弦番号・ポジションなどが、これでもかというくらい、たくさん付いています。
ピアノ譜と比較してみましょう。ピアノ譜の方は、2段同時に読まなければいけませんが、1段ずつ見れば、それぞれは比較的シンプルに書くことができます。声部が分かれたとして、楽に書くことができます。
一方ギターは、3オクターヴの意外に狭い音域の中でポリフォニック(多声的)に書こうとすると、どうしても無理が出てきてしまいます。
声部の割りふり
(譜例をあげて説明しています。a~d。サンバの譜例としてe~g。)
a.メロディー、伴奏、ベースを分けて3声で書く
b.メロディー、伴奏+ベースの2声
c.メロディー+伴奏、ベースの2声
d.メロディー+伴奏+ベースの1声
結論
曖昧なままで結論もありませんが、要するに、見やすく、必要な声部がひと目で分かるような書き方が望ましいわけで、全曲を通して統一された書き方ができれば、それに越したことはありません。
とにかく、たくさん書いて自分のスタイルを模索してみてください。健闘を祈ります。